幼女選記#5 静と動

 まず始めに、このブログを共同で運営していくにあたり、誰が書いた文章が一目でわかるようにしようということになり、僕は「幼女選記」というタイトルを使うことにした。これからもご愛顧のほどお願いしたい。

 

 閑話休題

 

 よくこういうアドバイスを求められる。「攻撃の際の起こりをなくしたい。」と。結論から書く。そんなことはできない。動きと動きの間には必ず停止している瞬間が生まれてしまう。これはどんな人にも当てはまる。僕の先生に言わせればそれは”静と動”という表現になる。動の間に挟まれる静の瞬間を見抜けば相手の行動を予測するのは容易になると言っていた。つまり、多くの人は軽く跳ねながら自分のリズムを作っているわけだが、攻撃するときにはそのリズムから違う動きに移る。別の動きをするために力の出力方法を変える。その変遷の瞬間に動きが止まる瞬間が生まれる。「止まる」といっても、ほとんどの場合、実際に硬直しているわけではなく、相手の攻撃に対処できない隙ができる、くらいのニュアンスだと思っていただきたい。相手が打ってきたことを認識できても自分のコマンドをキャンセルできない瞬間が何フレームか存在するのだ。

 その「静のフレーム」とでも呼ぶべき時間が長い人ほど攻撃がバレやすい。攻撃に向けてステップが徐々に変わってしまう人がいるが、そういう人まさに当てはまる。一足一刀で決めようとする人に多い現象なので気をつけてほしい。また、打つ瞬間に力む人も静のフレームが長い。力が入ってしまうと身体が硬直し、完全に動きが止まった瞬間が生まれてしまう。

 今書いたのは極端な例であるが、最初にも書いた通り静のフレームはどんなに強い人にも生まれる瞬間である。彼らはどういう風に静のフレームを相手に見破られないようにしているのか。まず、シンプルに静のフレームのコマ数自体を減らすこと。これは先程書いた静のフレームが長い人と正反対のことをすればよく、スムーズで一定なステップと力みのない打ちで実現できる。しかし、それでもやはり静のフレームはどうしても生まれる。出技を狙われたり、団体戦等で引き分け狙いの相手には簡単に見破られてしまう。

 そこでもう一工夫必要になる。カギは相手の静のフレームを利用することだ。再三申し上げているが、静のフレームは誰にでも存在する瞬間なので、当然攻撃を受けようとする側にも生まれる。自分に静のフレームがあっても、その瞬間に相手も静のフレームが起きていたら安全に攻撃が打てる。ステップやフェイントで相手の体制が崩れた瞬間は相手の静のフレームが発生しているといえる。崩した後に空いている場所を落ち着いて打てばいい。相手の動きを殺してしまえば、打ちの速さに拘りすぎる必要はなくなる。

 静と動のリズムを理解し、利用することで出技や飛び込みのタイミングが掴める。出技は相手の動き出しを捉える技である。相手の静のタイミングを見破ることができたら次は動、すなわち打ってくる。つまり、相手が止まったと思えば次は打ってくるであろうからどこに打ってくるかを予測し打ちを合わせれば出技の完成だ。

 飛び込みは、今度は相手を崩したときに使える技である。フェイント等で相手を崩し、相手が体制を立て直そうとしたときに相手は静の時間を迎える。その瞬間に一気に間合いを詰めてしまえば相手は反応できないことが多い。

 

 今回はかなり抽象的な話になってしまったが、みなさんが練習の中でこの概念を理解できる瞬間が来ることを願っている。(幼女)